電気の旅はどこから始まる?
私たちが日常的に使っている電気は、照明や冷蔵庫、スマートフォンの充電など、生活に欠かせない存在です。しかし、その電気は一体どこからやってきて、どうやって私たちの家のコンセントまで届くのでしょうか?
電気の旅は、大きく分けて「発電 → 送電 → 変電 → 配電 → 家庭」の5つのステップで進みます。それぞれの段階には、安全で効率的に電気を届けるための仕組みと技術が詰まっています。
スタート地点は「発電所」
2-1. 発電の種類
電気はまず「発電所」でつくられます。日本にはさまざまな発電方式があり、それぞれ特徴があります。
- 火力発電:石油・石炭・天然ガスを燃やして蒸気タービンを回す。安定供給が可能。
- 水力発電:ダムの水の力でタービンを回す。再生可能エネルギーでCO₂排出が少ない。
- 原子力発電:ウラン燃料の核分裂で発生する熱を利用。大量の電力を安定的に供給可能。
- 風力発電:風の力でプロペラを回し発電。環境負荷が少ないが、天候に左右されやすい。
- 太陽光発電:太陽光を直接電気に変える。住宅用としても普及中。
2-2. 発電時の電圧
発電所でつくられる電気は、数千〜数万ボルトと非常に高い電圧です。この高電圧は長距離送電に有利ですが、そのまま家庭で使うことはできません。
遠くまで運ぶ「送電」
発電所は都市から離れた場所にあることが多く、作った電気を長距離運ぶ必要があります。
このとき活躍するのが送電線です。送電線には、山間部を越える高い鉄塔や、都市部の地中に埋められたケーブルがあります。
- 高電圧送電:電気を遠くまで効率的に運ぶため、50万ボルト(500kV)クラスの超高圧が使われます。
- 送電線の種類:架空送電線(鉄塔)と地中送電線(地下埋設)
高電圧のまま送電することで、電流が減り、エネルギー損失(発熱)を抑えられます。
電圧を調整する「変電所」
送電線で運ばれた電気は、そのままでは家庭や工場で使えないため、変電所で電圧を段階的に下げます。
4-1. 変電の流れ
- 一次変電所:発電所から送られてきた50万Vを15〜20万V程度に変圧
- 二次変電所:20万Vを6万V程度に変圧し、都市部へ送る
- 配電用変電所:6万Vを6600Vに変圧し、街中の電柱や地中ケーブルへ
このように、変電所は“電気の中継基地”の役割を果たしています。
町中を走る「配電」
配電の段階になると、電気は私たちの住む街の近くまでやってきます。
配電線は大きく分けて高圧配電線(6600V)と低圧配電線(100V・200V)があります。
- 高圧配電線は電柱の一番上の段に張られており、各家庭に電気を届けるための元となる電力を運びます。
- 近所の電柱にある**柱上変圧器(トランス)**で、6600Vを100Vまたは200Vに変圧し、家庭へ送ります。
家の中に入ってくる「引き込み線」
柱上変圧器で家庭用電圧に下げられた電気は、引き込み線を通じて家に入ります。
引き込み線は、屋根の近くにある「引込口」から室内の分電盤へつながります。
- 分電盤の役割:家中の回路に電気を分配する。ブレーカーで過負荷や漏電を防止。
- 100Vと200Vの違い:100Vは一般的な家電、200VはエアコンやIHクッキングヒーターなど高出力機器用。
コンセントまでの最後の旅
分電盤から先は、家の壁や床下に配線され、各部屋のコンセントや照明器具へとつながります。
私たちが家電製品のプラグを差し込むと、電気の旅はゴールを迎え、そこでエネルギーとして利用されます。
電気が止まるのはどんなとき?
電気は常に送られていますが、以下のような場合には一時的に供給が止まります。
- 停電:落雷、台風、地震などによる設備損傷
- 計画停電:電力需給バランスを保つための一時的な供給停止
- 工事による停電:配電線や変電所の点検・改修工事
電力会社は、停電発生時に復旧作業を行い、可能な限り早く供給を再開します。
まとめ
電気は、発電所で生まれ、高圧送電線で長距離を運ばれ、変電所で段階的に電圧を下げ、配電線を通って私たちの家まで届きます。
一見シンプルに見える流れですが、その裏には複雑な電力インフラと安全管理の仕組みがあります。
私たちが毎日何気なく使っている電気も、実は長い旅を経てコンセントにたどり着いているのです。